大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)1303号 判決

〔証拠〕によれば、異議申立提供金は手形支払銀行(返還銀行)が「手形の支払を拒絶した手形支払義務者にそれを支払う資力がないのではなく、正当の抗弁事由があるので支払拒絶をするのであること」を疏明し、不渡処分を阻止するため手形交換所に預託する金銭であつて、不渡手形の担保ではなく、また、預託者は支払銀行自身であつて、支払銀行が手形支払義務者の代理人又は使者として預託をなすものでないことが認められるから、手形支払義務者が支払銀行に預託した金員と支払銀行が手形交換所に提供した異議申立提供金とは区別されるべく同一視することはできない。

もつとも、支払銀行が事前に取引先である手形支払義務者からの依頼によつて、手形金相当額の預託をうけた上、右手続を履践するのが常であろうことは、事柄の性質上容易に推認できるが、そうであるからといつてこの関係を控訴人所論のように解さなければならないものではない。むしろ、手形交換規則による銀行取引停止処分は不良手形の流通を防止し手形取引一般の信用を維持せんとする目的にいでたものと解すべきであつて、支払銀行の手形交換所に対する異議申立金の提供の如きも、単に前記疏明手段にすぎず、特定の手形の信用を維持し、その手形権利者に対する手形金の支払担保の作用を営ませるためのものではないと解するのが相当である。また、手形交換規則は、原判決説示のとおり手形交換所加盟銀行間の内部規則であつて、この規則によつてその構成員でない(準社員でも代理交換委託者でもない)手形権利者が異議申立提供金につき控訴人主張のような権利を取得し得べき法理を見出すことはできないのみならず、手形支払義務者が支払銀行に対してなす手形金相当額の預託又は支払銀行のなした手形交換所に対する異議申立提供金の預託が、手形権利者のため、預託した金員をその所持する手形の決済に振向ける旨の意思表示或は合意を含むものと認めるに足りる証拠もない。それ故、被控訴人のなした本件相殺が控訴人に対抗できず、又は権利の濫用であるとする控訴人の主張は採用できない

(川添利 荒木 田尾)

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